父親の三回忌に私一人で里帰りした。
65歳になった母親が嬉しそうな顔で出迎えてくれた。
白髪交じりだった髪が黒くなっていた。
染めたのよ、と言って少し照れていた。
坊さんも呼ばず、母親と二人だけで静かに父親の冥福を祈った。
そろそろ私も厄落とししてもいいかしら、と母親が位牌を見ながら言った。
その時は何のことか分からず、いいんじゃないと相槌を打った。
それを聞いた母親が楽しそうに夕食の支度を始めた。
食事が終わると、一緒に風呂に入ろうと母親の方から言い出した。
それもいいね、と残ったビールを飲み干すと、ちょっと待ってて、と母親が
寝室に暫くこもっていた。
さ、入ろうと言われて服を脱いだ。
風呂場に入ると母親が先に身体を流していた。
立ち上がった拍子に股の付け根に目が行った。
一本の毛も生えていなかった。
脚を閉じていても襞の割れ目が見えていた。
どうしたの、と聞くと、ここは染められないからね、と笑った。
ツルンとした剃り跡からみると、ついさっき剃ったばかりのようだった。
こうしてれば歳を感じないでしょ、と母親が言って湯船に入った。
襞が割れて、中の赤い肌が濡れていた。
ざっと身体を流して湯船に入ろうとしたが、母親が出る様子は無かった。
仕方なく母親の正面に身体を沈めた。
湯が勢いよくこぼれた。
二人で入るには小さな湯船なので両足で母親を挟むような格好になった。
母親が腰を前に突き出したので前が触れ合った。
母親がククッと喉の奥で笑った。
厄落としってこのこと、と聞くと母親が黙って頷いた。
うちの田舎にはかつてくじ引きで相手を決めたスワッピングのような風習が
あり、厄落としと呼ばれていたと亡くなった祖母に聞いたことがある。
両手を風呂の縁についた母親が腰を持ち上げて乗り掛かって来た。
先端が襞に挟まれ、ゆっくりと飲み込まれて行った。
65歳でも母親の中は熱く濡れていた。
思いの外、きつかった。
里帰りよ。
全てが収まったところで母親が腰を回し始めた。
たまには帰って来なさい。
余所に女なんか作っちゃだめよ。
そう言われて思わずギクッとした。
ここ何年もカミさんを抱いていない。
ひょんな切っ掛けで会社の女と危ない関係になり掛けていた。
カミさんと母親は嫁姑なのにえらく仲がいい。
もしかしたらカミさんが虫封じを母親に頼んだのかも知れない。
ほら、お留守になってるよ、と母親が腰をグリグリ押し付けてきた。
音を立てて湯がこぼれ落ちた。
母親の落とした厄にスッポリ包まれたような気がした。