同性愛者の館セレクション

読んで楽しむアダルトエログ

初恋
投稿者:
レイ
きっかけは友達のYがN先生に告白すると言いだしてから。
私は
『でもセンセーは女だよ?』
と言ったのですが
『そんなの関係ないって。N先生かっこいいし、キレイだし!』
とYははしゃいでいました。
N先生は隣のクラスの担任で、私のクラスの英語の担当がN先生でした。
Yが告白すると言った翌日からN先生を何となく目で追うようになりました。
先生はいつもスーツをビシッと着こなしているし、ハキハキしていて、
授業中もよく通る声で『かっこいいかも』と私もその時は思いました。
N先生を意識するようになってから数日が経ったある日、私が部活を終えて
教室に忘れ物を取りに戻った時のことです。
廊下で(多分、戸締まりの確認をしていた?)N先生を見かけました。
その時見たN先生はいつもの元気さはなく、どこか寂しそうな陰のある表情で、
私は思わずドキッとしました。
N先生は私に気付くと
『どうしたの?もう遅いよ。早く帰りなさい』
といつものように笑いました。
その時は軽く返事をして帰りましたが、私は先生の表情が頭から離れず
胸の鼓動もしばらく治まりませんでした。
それから私はN先生を意識するように…というより、あの時の先生の表情が
忘れられなくて先生に『どうしたんですか?』って聞きたいのが本音でした。
だから廊下で会ったら声をかけたり、英語の解らない部分を職員室に聞きに
行ったり、少しずつだけど先生と話す機会は増えていきました。
それでもN先生はいつものN先生で、逆にあの時見た先生は見間違えだったのかなって
思うほどでした。
それに時間が経てば経つほど、先生と話せば話すほど、あの時の事は聞きづらく
なっていきました。
文化祭が終わる頃には、授業中はN先生の唇の動きまで追うようになり、
廊下でも『N先生』という単語にも反応してしまうほどでした。
N先生のことを考えると胸の辺りが苦しくなり、私はこの感覚がよく解らずに
モヤモヤとした日々を過ごしていました。
文化祭の翌日、後片付けをしているとN先生から
『レイちゃん、今日はこれで学校終わりよね?。
もしこの後暇だったら私に付き合ってくれないかな?』
と声をかけてきました。
突然のことに、嬉しいような恥ずかしいようなで、私は何度も頷くことしか
できませんでした。
一度家に戻って着替えてから、駅前で先生と会いました。
スーツじゃない私服のN先生はいつにもまして元気で、それによく笑いました。
『今は学校じゃないから"先生"はナシね』
って言いながらはにかむN先生は同性の私から見ても可愛いと思えました。
食事をしたりお買物してるうちに私の緊張も適度にほぐれてきました。
気が付けば夜が近くなったので私は
『そろそろ――』
と切り出すと
『あれ、帰るの?。せっかくだからウチにおいでよ。夕飯ご馳走するよ?』
と言ってくれたのですが、帰りが遅いと親が色々うるさい事を話すと
『レイちゃん、私は"先生"だよ。安心して家に電話しなさい』
と笑うので、お言葉に甘えて先生のマンションへ向かいました。
N先生の手料理を食べた後、お酒を飲みながら(先生はかなり飲んでたけど普通でした)
色んな話で盛り上がりました。
『今日、どうして誘ってくれたんですか?』
と聞くと
『レイちゃん、いつも頑張ってるし。
それに文化祭の時もダンスに誘ってくれたけど、ホラ、忙しくて断っちゃった
でしょ?。今日はその埋め合わせよ』
と笑いました。
私は"あの放課後"の事を切り出したかったのですが、結局その日はメアドを
交換して、
『泊まってく〜?』
という酔っている先生の誘いを断って終電近くに帰ることにしました。
それから私とN先生の仲はさらに深まっていきました。
友達のYが『私は断られたのにー』とぼやいてたのを覚えています。
授業のない時や休日でもメールをしあって、お互い時間がある時は一緒に
過ごしたりして、N先生との絆は強くなっていきました。
そんなある日、N先生から『会いたい』とだけメールが来ていました。
たったそれだけなのに、嬉しくなったと同時に何か厭な胸騒ぎもしました。
すぐにメールを返して学校の屋上へ行きました。
部活の後だったので屋上には誰もいなく、夜を知らせる肌寒い風が吹いてる中で
N先生は手摺りに寄り掛かっていました。
先生が私に気付いて振り返った時の表情は、あのいつか放課後に見たときと
同じ顔をしていました。
先生に近づくと、先生は何も言わずに私を抱き締めて静かに涙を零しました。
その時私は先生の胸の鼓動を聞きながら『やっぱり私はこの人が好きだったんだ』
と思いました。
N先生を思うと胸が苦しくなったり気持ちがモヤモヤしてたのは、先生が好き
だったからだと。
同性だからとか、先生っていう立場なんか関係なく。
私も先生の背中に腕をまわし、先生が落ち着くのを待ちました。
しばらくして先生はゆっくり私から離れると小さな声で
『ごめんね』
と弱々しく笑いました。
私はやっと
『どうしたんですか?先生』
と訊ねると、先生は静かに話しはじめました。
N先生は教師になりたくて両親の反対を押し切って上京してきた事。
少し前からその両親が勝手に結婚話を用意して、相手には結婚式の
日取りまで決めてしまっていた事。
そして結婚式が終わったら教師を辞めて実家に帰ってくるようにと
強引に決められた事を話してくれました。
『お父さんもお母さんも世間体ばかり気にしていて、勝手だよ。
私の意思なんて全くないの。私のことなのに。やっと教師になれたのに。
悔しくて…。それにね――』
先生は涙を拭いながら
『それにね、せっかくレイに会えたのに』
そう言って先生は私をさっきより強く抱きしめながら
『レイと離れたくない!。
こんなことでレイと離れるなんて、わたし耐えられる訳ないよ…』
それから先生は関をきったように声をだして泣きました。
そんな先生を見ていると私も胸が苦しくて涙が流れてきて、二人で泣きました。
それから先生と何度も何度も話し合いました。
もう何もかも忘れて二人で逃げようなんて事まで話し合いました。
でも結局いい方法は浮かばず、先生が実家に戻る日は近づいてくるばかりでした。
N先生は何度も両親に相談したそうですが両親の意見は変わらず、先生も私も
『絶望』という言葉を残したまま、とうとうN先生が実家へ帰ってしまう日が
来ました。

私は1時間前に新幹線の乗り場で待ってました。
今までのN先生との思い出が頭の中でよみがえり、必死に泣くのを堪えてました。
そしてN先生の姿を見つけると、走っていました。
先生も小走りに私のところへ来て抱き締めてくれました。
それからどちらともなく自然に唇を重ねました。
N先生を忘れてしまわないように、刻み付けるように、長い長いキスをしました。
最後は笑っていようねって決めたのに、先生も私もダメでした。
新幹線が来るまでは一言二言しか話しませんでした。
何か喋るとまた泣いてしまいそうだったからなるべく下を向いて我慢しました。
『サヨナラは言わないね。絶対また会いにくるから』
とだけ言ってN先生は新幹線に入っていきました。
私は精一杯顔をあげて、上手く笑えたかは解らなかったけど
『大好きなNさんのこと、待ってますから』
ってなんとか言えました。

こうして私の初恋は終わりました。
Nさん、元気かな。
あなたは私にとって世界の全てでした。
また会えますよね…?。
  1. 作品リスト
  2. トップ
©ナンネット All rights reserved.